イラストレーター、ミュージシャン中村佑介のオフィシャルブログ または心のおもらし。Twitterは@kazekissaまで。
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若干有料の方のライン
降るたび涼しくなるので、雨は秋の足音のよう。秋と言えば読書ということで最近は良く本を読んでいる。自分でも本を出しており、出版社と本屋さんにはたくさんお世話になっているので、きちんと業界にお金が周るように、書籍は意識的にすべて新品で買うようにしているのだが、読者の中にはブックオフや古本市場を利用している人も少なくないだろう。僕も決められたお小遣いでやりくりしていた学生時代には随分利用させてもらったし、今でも読まなくなった本を引き取ってもらうことも時々ある。そしてもうひとつ、絶版している本を探す時だ。
今回手に取ったのはナンシー関:著『何様のつもり』(角川文庫)。 "ナンシー関"という名前を聞いて、「あぁ」という方は僕と同世代か、10年未満年上の方だろう。というのもナンシーさんは、39歳という若さでお亡くなりになったので、主に90年~00年代というピンスポットで活躍していたコラムニストだからだ。若い方でもこの本の表紙にもある芸能人の似顔絵の消しゴムハンコくらいは見たことがあるかもしれないが、ちょうど今のマツコデラックスさんを想像してもらうとわかりやすいと思う。マツコさんはテレビに出てそれを喋っているが、ナンシーさんは雑誌などで文章という形で毒舌芸能批評を続けていた。ちなみにナンシーさんがお亡くなりになる少し前に、お二人はまるでバトンタッチするように雑誌で対談している。
と言っても、今回はナンシーさんでもマツコさんでもなく古本についてのお話である。古本の良さは何も安さだけでなく、ロマンがあるところだろう。本に残っている前の持ち主の家や煙草の匂いも風情があるが、とりわけ僕が好きなのは"ライン"だ。無料通話アプリの話ではなく、有料通話アプリというべき代物。特に学術書などに多く見受けられるが、自分の重要だと感じた文章の横に引かれた蛍光ペンのライン。それはその人の身になったから売ったのだろうか?それとも夢半ばに破れ、その思いを振り切るように売ったのか。まぁどちらにせよ、この『何様のつもり』は芸能人批評コラムなのでラインとは無縁だろうと本を開けて見ると、何と早速引かれていた。しかも重要なのかどうか良くわからない箇所にだ。
例えば"困って意味なく会場にいる緒方拳をうつしたりしていた"や、"ウチのシロのドッグフードをビタワンからペティグリーチャムに変えてみたの"などなど、コラムの中でも特に重要ではない箇所。挙句の果てには"全ページ「だからどうした」の集大成である"という横に引かれたラインこそ、"だからどうした"のだろうか。他にもシンガーソングライターの槇原敬之さんに関する回のコラムで、槇原さんとイメージが似ている当時の歌手として、大事MANブラザーズバンド、沢田知可子さんなどが挙げられ、最後に"あと名前忘れたが『ほっとけないよ』とか歌っている男"と書かれた部分の横にやはりラインがしてあり、横に鉛筆で小さく"KAN"と書かれていた。 そこでようやく理解した。この持ち主、ナンシーさんと会話していたのだ。これまでの意味不明な箇所のラインは、「笑っていいとも!」の"そうですね~"のように、ナンシーさんの文章に対する拍手や笑い声、そして相槌のようなもので、最後の"名前忘れたが~"の部分はクイズコーナーだったのだ。この感覚、どこかで味わったことある…そうだ、ニコニコ動画だ。
元々、ナンシー関さんに最近になって興味を持ったのも、ニコニコ動画に出演されていた精神科医の斎藤環さんが好きになり、斎藤さんも関わっている『ヤンキー文化論序説』(五十嵐太郎:著)でナンシー関さんの話が何度も出て来たのがきっかけである。ちなみにナンシーさんが活躍されていた90~00年代に僕は彼女の存在は知らず、テレビゲームばっかりやっていたので、そのあたりは現在発売中の『ザ・テレビジョンCOLORS vol.2 BLUE』に載っている僕のインタビューを読んでほしいのだが、ナンシーさんが生きていたらこのネット上にある表紙画像から見えるジャニーズ事務所の肖像権に対する徹底的管理姿勢をどう書いただろう。ちなみに書店で並んでいるものは嵐の大野智さんがきちんと写っている。
話を戻そう。ニコニコ動画は元々、岡田斗司夫さんや宮台真司さん、東浩紀さんや村上隆さんなどの討論番組が好きで見始め、その最大の特徴である画面に表示される視聴者コメントは消して見ていたものの、特に岡田さんの番組に顕著だが、コメント込みでひとつの番組になっていることに最近ようやく気付き、もっと好きになったメディアだ。そのコメントに見える"88888"という拍手や突っ込みが、この古本に引かれたラインにとてもよく似ているのだ。しかしひとつだけ言わせてほしい。『ほっとけないよ』を歌っていたのはKANさんとは別人だ。だから僕は、前の持ち主が書いた"KAN"の横にさらに線を引き、"違います。それは楠瀬誠志郎さんです"と注意書きを加え、今はなきナンシーさんを交えた見ず知らずの3人で秋の夜長を楽しもうと思う。
追伸/文中に出て来た『ヤンキー文化論序説』とはこの本です。 タレント・モデルのユージさんのラジオ番組にゲスト出演させて頂いた時の1枚。その模様は明日、8月31日(土)21:00~23:00に放送されるインターFM『TECHNOS COLLEGE Young Blood』にて。11月発売の『中村佑介 2014年カレンダー』や、来年発売予定の2冊目の画集など、重要な告知も兼ねておりますので、関東近辺の方はぜひ、ラジオやradikoでお聞きください。『ヤンキー文化論~』の方はまだ絶版しておりませんので、気になった方は古本ではなく書店にてお買い求め下さい。そこんとこ夜露死苦お願い致します。
今回手に取ったのはナンシー関:著『何様のつもり』(角川文庫)。
と言っても、今回はナンシーさんでもマツコさんでもなく古本についてのお話である。古本の良さは何も安さだけでなく、ロマンがあるところだろう。本に残っている前の持ち主の家や煙草の匂いも風情があるが、とりわけ僕が好きなのは"ライン"だ。無料通話アプリの話ではなく、有料通話アプリというべき代物。特に学術書などに多く見受けられるが、自分の重要だと感じた文章の横に引かれた蛍光ペンのライン。それはその人の身になったから売ったのだろうか?それとも夢半ばに破れ、その思いを振り切るように売ったのか。まぁどちらにせよ、この『何様のつもり』は芸能人批評コラムなのでラインとは無縁だろうと本を開けて見ると、何と早速引かれていた。しかも重要なのかどうか良くわからない箇所にだ。
例えば"困って意味なく会場にいる緒方拳をうつしたりしていた"や、"ウチのシロのドッグフードをビタワンからペティグリーチャムに変えてみたの"などなど、コラムの中でも特に重要ではない箇所。挙句の果てには"全ページ「だからどうした」の集大成である"という横に引かれたラインこそ、"だからどうした"のだろうか。他にもシンガーソングライターの槇原敬之さんに関する回のコラムで、槇原さんとイメージが似ている当時の歌手として、大事MANブラザーズバンド、沢田知可子さんなどが挙げられ、最後に"あと名前忘れたが『ほっとけないよ』とか歌っている男"と書かれた部分の横にやはりラインがしてあり、横に鉛筆で小さく"KAN"と書かれていた。
元々、ナンシー関さんに最近になって興味を持ったのも、ニコニコ動画に出演されていた精神科医の斎藤環さんが好きになり、斎藤さんも関わっている『ヤンキー文化論序説』(五十嵐太郎:著)でナンシー関さんの話が何度も出て来たのがきっかけである。ちなみにナンシーさんが活躍されていた90~00年代に僕は彼女の存在は知らず、テレビゲームばっかりやっていたので、そのあたりは現在発売中の『ザ・テレビジョンCOLORS vol.2 BLUE』に載っている僕のインタビューを読んでほしいのだが、ナンシーさんが生きていたらこのネット上にある表紙画像から見えるジャニーズ事務所の肖像権に対する徹底的管理姿勢をどう書いただろう。ちなみに書店で並んでいるものは嵐の大野智さんがきちんと写っている。
話を戻そう。ニコニコ動画は元々、岡田斗司夫さんや宮台真司さん、東浩紀さんや村上隆さんなどの討論番組が好きで見始め、その最大の特徴である画面に表示される視聴者コメントは消して見ていたものの、特に岡田さんの番組に顕著だが、コメント込みでひとつの番組になっていることに最近ようやく気付き、もっと好きになったメディアだ。そのコメントに見える"88888"という拍手や突っ込みが、この古本に引かれたラインにとてもよく似ているのだ。しかしひとつだけ言わせてほしい。『ほっとけないよ』を歌っていたのはKANさんとは別人だ。だから僕は、前の持ち主が書いた"KAN"の横にさらに線を引き、"違います。それは楠瀬誠志郎さんです"と注意書きを加え、今はなきナンシーさんを交えた見ず知らずの3人で秋の夜長を楽しもうと思う。
追伸/文中に出て来た『ヤンキー文化論序説』とはこの本です。
by kazekissa
| 2013-08-30 19:05
| 日記