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イラストレーター、ミュージシャン中村佑介のオフィシャルブログ または心のおもらし。Twitterは@kazekissaまで。


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結婚三部作~前編~

先日、悠一くんという友人の結婚式の為にウェルカムボードを描きました。
いつも彩色はパソコンを使っているのですが、久々の絵の具での作品です。
結婚三部作~前編~_b0102637_844202.jpg
彼とは数年前に大阪のARTHOUSEで行った似顔絵展『PORTRATION』で出会い、
その後も僕がやっているバンド・セイルズのライブに遊びに来てくれたり、
また逆に彼の大学時代に講演会を企画してくれたりしているうちに仲を深め、
今ではプライベートの大切な友人のひとりです。

彼が生粋の長男気質なのか、ただ単に僕が甘えん坊なだけなのかは定かではありませんが、
10歳年下なのにも関わらずお兄ちゃんのように僕の面倒を見てくれて、
次第に彼の本当の弟さんにも、妹さんにも、お母さんにも、お父さんにも挨拶を済ませ、
「これで名実ともに正式の悠一の弟面できるゼ!」などと考えていたので、
結婚すると聞いた時は、「ぐぬぬ…ライバル登場!」などと自分のポジションを危うく感じました。
しかし結婚相手の萌子ちゃんもこれまた3人姉弟の長女で、保育園の先生という、
甘えるには打ってつけの人材だったのでひと安心
とてもしっかりした女性だったので、結婚の先輩としては納得しました。
そして、絵からわかる通り、彼は中学校の先生をしていて、
今年ようやく自分の担任するクラスを受け持つことになりました。

そんな公私ともに、一見とんとん拍子に人生の階段を駆け上がっているように見える彼も、
現在までずっと長い間、自分の生き方について、こと仕事において、戸惑っているように見えました。
大学在学中にバイトをしていたカフェの仕事も楽しいし、
美術や音楽などサブカルチャーに関する出版社にも興味があるし、
だけど自分は先生を目指して親元を離れ、教育大学に入ったんだし。。。
そんな迷いは非常勤→副担任と先生の道を進むにつれても、あったように思います。

そして生徒たちと触れ合って行く中で、
「この仕事イイ!俺は先生になるんだ!!」と選択肢の迷いが消え、
そこに現在の奥さまである萌子ちゃんが現れ、結婚を決めた。
これは偶然でも何でもないなぁと自分の場合を照らし合わせてみても思いました。

僕も子供の頃の夢は、いいえ、30歳まで描いていた夢は漫画家になることでした。
そう、その時僕はすでにイラストレーションの仕事を数多く手掛けていたにも関わらずです。
だから「イラストレーターの~」名乗る時はいつも抵抗を感じており、
活動して10年も経っていたのに、画集を出さなかった理由はそこにありました。
「画集を出したら、本当のイラストレーターになってしまう!
漫画家の夢をあきらめたことになってしまう!!」そんな風に考えていたのです。

しかし色々な経験を通し、「自分がなりたいもの」と「自分が向いているもの」って違うのだなと思い、
また、悠一も含め、応援して下さっている人たちと実際に会って話してみて、
段々自分でもそれが認められるようになってきて、そして理想と現実が仲直りした時に、
画集を出すことに決め、その後、すぐに結婚することも決めました。

「こんなはずじゃなかった」と後ろばかり振り向いてた自分が
「こんな人生もいいかも」と立ち止まり、「これこそが素晴らしい!」と前を向く。
きっかけは色々あると思いますし、言葉に置き換える程に、
その心の動きの様子は遠ざかる気もしますが、
それは自分(仕事)に対しても、他人(パートナー)に対しても同じことなんだと、
悠一の結婚までの道のりを思い出しながら、
「良かったねぇ、良かったねぇ」と筆を進めておりました。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「今を生きて」という最新シングルジャケットで、
花嫁衣装を描いたのも、同じ理由です。そして同じ黄色ですね。
結婚三部作~前編~_b0102637_10151790.jpg
もしかしたら、結婚式でみんなが花嫁・花婿にかける「おめでとう!」という言葉は、
「(今日の自分と仲直りできて)おめでとう!」の省略なのかもしれませんね。
ウェルカムボードを描き上げ、少なくとも僕はそういう意味で「おめでとう!」と言って、
無事渡すことが出来ました。会ってはじめて年上らしい事を出来た気がします。
いいえ、いつも一枚上手の彼ですから、それをさせてくれたのかもしれませんね(笑)


なお、ウエディングボードにつきましては、たくさんのご要望を頂き、
僕もお祝いしたい気持ちで一杯なものの、このように長~いこと付き合って考えない事には、
やはりお会いしたことのない方の人生の1枚は責任が持てないという理由から、
誠に勝手ながら、仕事としては受け付けておりませんので、ご理解頂ければ幸いです。

必ず、二人には二人にふさわしいウェルカムボードを描く方が側にいらっしゃいます。
どんな腕の良い写真家よりも、家族が撮った写真の方が素晴らしいように。
これから結婚される方が、幸せな式を挙げられること、心から願っております。
by kazekissa | 2013-05-18 10:16 | 日記