イラストレーター、ミュージシャン中村佑介のオフィシャルブログ または心のおもらし。Twitterは@kazekissaまで。
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Kへの手紙
カフェやレストラン、また新幹線や電車の中で
ノートパソコンを広げている人を見て「カッコイイ」と思ったことはあるかい?
なんかちょっと語尾がサニーデイサービスの歌詞みたくなっちゃったけど、
あの人たちって会議に間に合いそうにない書類を作成してるんだろうか。
それとも暇を持て余しmixiやYoutubeをぼんやり眺めているのか、
はたまた延々Windows付属のトランプゲーム"ソリティア"をしてるのか。
いや待てよ。スーツを着てるサラリーマン風だけど、
実はそれはフェイクであって、その中では女の子になりきって、
出会い系のサクラメールを打っているのかもしれない。
------------------------------------------------------------------------------
この仕事は、時間が自由に設定できること、収入が思ったより良かったこと、
そして俺は大学の時は文学部で、一時期は小説家になりたいとも思っていたくらいなので、
そこそこの文才もあり、興味本位ではじめてみた。
はじめは「こんなのに引っかかるバカな奴もいるんだなぁ」なんて鼻で笑いながら
まさか男に届いてるなんて気付いていない男からのメールに返信をしていた。
その中の一人はKといって、長崎から大学進学の為上京してきて、
そのまま都内の証券会社に就職した29歳の男。
仕事はやりがいがあるが、最近彼女と別れて生活にハリがなくメールしてみたという。
さすがに長崎出身ではなく、証券マンでもなかったが
自分のそれまでの状況と酷似していたので、数十といる男の中から興味を持った。
ただ俺はそれが嫌で、30を前にして思い切って会社を辞めたものの、
特にやりたいことがある訳でもなく、貯金で食いつなぎフラフラとしていた。
そんな中、ついに大学の時から付き合っていた彼女も
「あなたとは先が見えない」という手紙を残し去っていった。
最後の言葉くらい何も文章でいうことないじゃないかと思ったが、
お互い文学部だったので、それもそうかと変に落ち着き納得した。
勿論だが俺は男なので、返信するメールには様々な女の偽名を使っていて、
ほとんどが知っているアイドル、小説の主人公、喋ったこともない同級生の名前だ。
その都度、名前に引っ張られるように自然と自分の性格も変化するのでおもしろいのだが、
女言葉を使っていても、どこまで行っても自分は自分、
この仕事に若干の後ろめたさを感じていたのも事実なので、
一番最初に、無意識に母の名前を打ってしまった時は、すぐさま打ち消した。
しばらく実家にも帰っていないが、昨日母からの電話でこんな話を聞いた。
「黒柳徹子さんは、男の子が産まれてくると思って"徹(とおる)"という名前の予定だったんだけど、
女の子だったので、それに"子"を付けて、徹子(てつこ)になったんだって。
だから"とおるこ"とも呼べるから、トットちゃんっていうあだ名なのよ!」
小学生の時家の本棚に並んでいた『窓ぎわのトットちゃん』を読んで、
それから文章の本を好きになったので、
そのエピソードは勿論知っていたが、そうかあれは父の本だったのか。
てっきり母が育児用に買ったものだとばかり思っていた。
最後まで迷ったのが、Kの相手役の名前だ。
はじめのうちは決めかねて「匿名希望さん」と名乗っていたが、
Kとメールを通し色々な話をしていると、だんだんと親近感を持つようになってしまったのだ。
まるで昔からの恋人、いや、男同士だから親友か。
違う、おそらくは1年前の自分自身を重ねていたのだろうと思う。
とは言え、事実ささやかな好意があったので、結局は嘘になってしまうのだが、
メールの中だけは、出来るだけは誠意を持って向き合いたいと思った。
だからと言って黒柳さんのようにはいかなかった。
俺の名前はドラえもんのジャイアンと同じ剛なので、"子"をつけても"美"をつけても、
女の名前になりそうにない。
一瞬、ジャイアンの妹の真っ赤なベレー帽が思い浮かんだが、
すぐさま却下されたのは言うまでもない。
そこで俺は別れた彼女の名前である「百合子」を名乗ることにした。
我ながら女々しいとは思いつつも、一番近い存在だったのにもう会えないというのは、
色んな意味で好都合だった。
百合子とKは会っていないだけで、毎日のようにたわいもないメールを交わし、
本当の恋人のように仲が良かった。
そんなある日、俺は最近の不摂生がたたったのか風邪をひいて、
パソコンを立ち上げる余裕もなく、寝込んでいた。
よく考えてみると、実家から大学に進学し、すぐに百合子と出会ったので、
一人で風邪をひいたのははじめたかもしれない。
都会の真ん中で何の当てもなく、咳をするのも一人だというのが、
こんなにも心細いものだったとは思いも寄らぬことだった。
本物の百合子が側にいた頃は「しんどいから帰ってくれ」と
追い返したことに今更ながら後悔したりもした。
あくる日、さいわい熱も引いたので、パソコンを立ち上げてみると、
数百の広告メール、「やらせてよ」や「会いたいなぁ」などのわかりやすい件名の
数重の出会い系の相手からのメールの中に、
Kからの心配そうなメールが3通入っていた。
悪いことをしたなぁという気になり、すぐさま「風邪をひいてました」と返事を書いた。
するとKから1分後にまた返信が届き、ほっとした様子だった。
本当に心配してくれていたのだなぁと嬉しくなった。
次の月、俺は友人の紹介で広告代理店に就職し、
コピーライターの仕事をさせてもらうようになった。
特に女性スタッフから「ほんとうに女性が書いたみたいな文章」と好評だった。
あたりまえだ。
一方、Kも数カ月して、同僚に好きな子が出来たらしく、
俺もずっと悪いなと思っていたので、自然と連絡を取らないようになったが、
あの風邪をひいたことをきっかけに買ったノートパソコンを持ち歩き、
今でも時々メールボックスを覗いてしまう。
------------------------------------------------------------------------------
というような一連の想像も膨らんでしまいそうだけど、
昨日のこと、S▲ILSのアコーディオン・あっちゃんが
お父さんから譲ってもらったというノートパソコンの調子が悪いらしく、
メンテナンスをさせてもらい、無事使えるようになったのはいいものの、
あまり高性能なものではなかったので「でもこれで音楽を作るのは難しいよ」と言ったら、
「いいねん。ガストでノートパソコン開きたいだけやねん!」とのこと。
どうやら23歳になったあっちゃんは可愛さよりも"カッコいいオンナ"を演出したいらしく、
無意味に外出先でノートパソコンを開きたいらしいのだ。
その場所にガストを択ぶのが効果的かどうなのかは別として、
僕も東京へ出張の際は、忙しくもないのに無意味に日帰りをしたりして、
"出来るオトコ"をアピールする方なので、気持ちはよ~く理解できた。
ということで答え。外出先でノートパソコンを開いてる人はほぼ何もしていません。
そして僕はその男にそっと近づいて行って、デスクトップを見て言い放つのです!
「テメー!さては何もしていないな!!
…………ゆ、百合子さん!?」
見つめあう二人の男。
お後が宜しいようで。
ノートパソコンを広げている人を見て「カッコイイ」と思ったことはあるかい?
なんかちょっと語尾がサニーデイサービスの歌詞みたくなっちゃったけど、
あの人たちって会議に間に合いそうにない書類を作成してるんだろうか。
それとも暇を持て余しmixiやYoutubeをぼんやり眺めているのか、
はたまた延々Windows付属のトランプゲーム"ソリティア"をしてるのか。
いや待てよ。スーツを着てるサラリーマン風だけど、
実はそれはフェイクであって、その中では女の子になりきって、
出会い系のサクラメールを打っているのかもしれない。
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この仕事は、時間が自由に設定できること、収入が思ったより良かったこと、
そして俺は大学の時は文学部で、一時期は小説家になりたいとも思っていたくらいなので、
そこそこの文才もあり、興味本位ではじめてみた。
はじめは「こんなのに引っかかるバカな奴もいるんだなぁ」なんて鼻で笑いながら
まさか男に届いてるなんて気付いていない男からのメールに返信をしていた。
その中の一人はKといって、長崎から大学進学の為上京してきて、
そのまま都内の証券会社に就職した29歳の男。
仕事はやりがいがあるが、最近彼女と別れて生活にハリがなくメールしてみたという。
さすがに長崎出身ではなく、証券マンでもなかったが
自分のそれまでの状況と酷似していたので、数十といる男の中から興味を持った。
ただ俺はそれが嫌で、30を前にして思い切って会社を辞めたものの、
特にやりたいことがある訳でもなく、貯金で食いつなぎフラフラとしていた。
そんな中、ついに大学の時から付き合っていた彼女も
「あなたとは先が見えない」という手紙を残し去っていった。
最後の言葉くらい何も文章でいうことないじゃないかと思ったが、
お互い文学部だったので、それもそうかと変に落ち着き納得した。
勿論だが俺は男なので、返信するメールには様々な女の偽名を使っていて、
ほとんどが知っているアイドル、小説の主人公、喋ったこともない同級生の名前だ。
その都度、名前に引っ張られるように自然と自分の性格も変化するのでおもしろいのだが、
女言葉を使っていても、どこまで行っても自分は自分、
この仕事に若干の後ろめたさを感じていたのも事実なので、
一番最初に、無意識に母の名前を打ってしまった時は、すぐさま打ち消した。
しばらく実家にも帰っていないが、昨日母からの電話でこんな話を聞いた。
「黒柳徹子さんは、男の子が産まれてくると思って"徹(とおる)"という名前の予定だったんだけど、
女の子だったので、それに"子"を付けて、徹子(てつこ)になったんだって。
だから"とおるこ"とも呼べるから、トットちゃんっていうあだ名なのよ!」
小学生の時家の本棚に並んでいた『窓ぎわのトットちゃん』を読んで、
それから文章の本を好きになったので、
そのエピソードは勿論知っていたが、そうかあれは父の本だったのか。
てっきり母が育児用に買ったものだとばかり思っていた。
最後まで迷ったのが、Kの相手役の名前だ。
はじめのうちは決めかねて「匿名希望さん」と名乗っていたが、
Kとメールを通し色々な話をしていると、だんだんと親近感を持つようになってしまったのだ。
まるで昔からの恋人、いや、男同士だから親友か。
違う、おそらくは1年前の自分自身を重ねていたのだろうと思う。
とは言え、事実ささやかな好意があったので、結局は嘘になってしまうのだが、
メールの中だけは、出来るだけは誠意を持って向き合いたいと思った。
だからと言って黒柳さんのようにはいかなかった。
俺の名前はドラえもんのジャイアンと同じ剛なので、"子"をつけても"美"をつけても、
女の名前になりそうにない。
一瞬、ジャイアンの妹の真っ赤なベレー帽が思い浮かんだが、
すぐさま却下されたのは言うまでもない。
そこで俺は別れた彼女の名前である「百合子」を名乗ることにした。
我ながら女々しいとは思いつつも、一番近い存在だったのにもう会えないというのは、
色んな意味で好都合だった。
百合子とKは会っていないだけで、毎日のようにたわいもないメールを交わし、
本当の恋人のように仲が良かった。
そんなある日、俺は最近の不摂生がたたったのか風邪をひいて、
パソコンを立ち上げる余裕もなく、寝込んでいた。
よく考えてみると、実家から大学に進学し、すぐに百合子と出会ったので、
一人で風邪をひいたのははじめたかもしれない。
都会の真ん中で何の当てもなく、咳をするのも一人だというのが、
こんなにも心細いものだったとは思いも寄らぬことだった。
本物の百合子が側にいた頃は「しんどいから帰ってくれ」と
追い返したことに今更ながら後悔したりもした。
あくる日、さいわい熱も引いたので、パソコンを立ち上げてみると、
数百の広告メール、「やらせてよ」や「会いたいなぁ」などのわかりやすい件名の
数重の出会い系の相手からのメールの中に、
Kからの心配そうなメールが3通入っていた。
悪いことをしたなぁという気になり、すぐさま「風邪をひいてました」と返事を書いた。
するとKから1分後にまた返信が届き、ほっとした様子だった。
本当に心配してくれていたのだなぁと嬉しくなった。
次の月、俺は友人の紹介で広告代理店に就職し、
コピーライターの仕事をさせてもらうようになった。
特に女性スタッフから「ほんとうに女性が書いたみたいな文章」と好評だった。
あたりまえだ。
一方、Kも数カ月して、同僚に好きな子が出来たらしく、
俺もずっと悪いなと思っていたので、自然と連絡を取らないようになったが、
あの風邪をひいたことをきっかけに買ったノートパソコンを持ち歩き、
今でも時々メールボックスを覗いてしまう。
------------------------------------------------------------------------------
というような一連の想像も膨らんでしまいそうだけど、
昨日のこと、S▲ILSのアコーディオン・あっちゃんが
お父さんから譲ってもらったというノートパソコンの調子が悪いらしく、
メンテナンスをさせてもらい、無事使えるようになったのはいいものの、
あまり高性能なものではなかったので「でもこれで音楽を作るのは難しいよ」と言ったら、
「いいねん。ガストでノートパソコン開きたいだけやねん!」とのこと。
どうやら23歳になったあっちゃんは可愛さよりも"カッコいいオンナ"を演出したいらしく、
無意味に外出先でノートパソコンを開きたいらしいのだ。
その場所にガストを択ぶのが効果的かどうなのかは別として、
僕も東京へ出張の際は、忙しくもないのに無意味に日帰りをしたりして、
"出来るオトコ"をアピールする方なので、気持ちはよ~く理解できた。
ということで答え。外出先でノートパソコンを開いてる人はほぼ何もしていません。
そして僕はその男にそっと近づいて行って、デスクトップを見て言い放つのです!
「テメー!さては何もしていないな!!
…………ゆ、百合子さん!?」
見つめあう二人の男。
お後が宜しいようで。
by kazekissa
| 2009-07-06 21:56
| 日記